「家計の健康診断は、年1回でいいのですか?」
これは、家計診断や産業FPの話をすると、よく聞かれる質問です。
もっと頻繁にチェックした方が安心なのではないか。
逆に、数年に1回でも足りるのではないか。
しかし私は、「年1回」という頻度には、非常に合理的な意味があると考えています。
その理由を考えるヒントは、私たちにとって最も身近な制度である健康診断にあります。
健康診断は、なぜ年1回なのか
健康診断は、多くの企業や自治体で「年1回」が基本です。
この頻度は、単なる慣習ではありません。
理由は大きく3つあります。
① 人の体は、1年単位で変化が表れやすい
生活習慣病、血圧、血糖値、体重、コレステロール。
これらは数週間で劇的に変わるものではありません。
一方で、
- 食生活
- 運動習慣
- ストレス
- 加齢
こうした要因が積み重なると、1年後には確実に数値に現れます。
短すぎず、長すぎない。
それが「年1回」という間隔です。
② 頻繁すぎると、続かない
毎月健康診断を受ける人はいません。
なぜなら、
- 面倒
- 時間がかかる
- コストが高い
- 精神的にも負担
だからです。
制度として定着させるためには、
**「多少面倒でも、なんとか続けられる頻度」**であることが重要です。
年1回は、その絶妙な落とし所です。
③ 異常があれば、次の行動につなげやすい
健康診断の目的は、「完璧な健康状態を保つこと」ではありません。
- 異常の兆しを早期に見つける
- 必要なら専門医につなぐ
- 生活習慣を見直すきっかけを作る
この入口としての役割が、健康診断の本質です。
家計も、実はまったく同じ構造をしている
では、お金の世界はどうでしょうか。
家計もまた、
- 収入
- 支出
- 貯蓄
- 借入
- ライフイベント
といった要素が、ゆっくり、しかし確実に変化していきます。
多くの人は、
- 住宅ローンは「なんとなく」
- 教育費は「その時に考える」
- 老後資金は「たぶん大丈夫」
- 保険は「入ったまま」
という状態で何年も過ごします。
しかし5年、10年が経ったとき、
「こんなはずじゃなかった」というズレが表面化します。
なぜ家計も「年1回」がちょうどいいのか
・変化が見えるのが1年後だから
昇給、異動、転職、物価、金利、家族構成。
これらは1年あれば、必ず何かが変わります。
半年では早すぎ、3年では遅すぎる。
やはり、年1回が最も現実的です。
・年1回なら「制度」として定着する
毎月の家計簿は続かなくても、
「年1回の健康診断」なら、多くの人が受け入れられます。
これは、努力ではなく仕組みの問題です。
続くかどうかは、意志の強さではなく、設計で決まります。
・問題が小さいうちに気づける
家計の問題は、いきなり破綻することは少なく、
- 少しずつ貯蓄が減る
- 返済がじわじわ重くなる
- 将来の選択肢が狭まる
という形で進行します。
年1回のチェックがあれば、
**「まだ打てる手がある段階」**で気づけます。
年1回の家計チェックは、「治療」ではない
ここで重要なのは、
家計の健康診断は、問題解決そのものではないという点です。
健康診断と同じく、
- 問題を可視化する
- 必要なら専門家につなぐ
- 行動のきっかけを作る
これが役割です。
すべてを一気に解決しようとする必要はありません。
「年1回」が文化になると、社会は変わる
もし、
- 年1回、家計を振り返る
- 客観的にチェックする
- 必要なら早めに相談する
これが当たり前になれば、
- 家計不安は減り
- 不正やトラブルの芽は小さくなり
- 人生の選択肢は広がる
はずです。
健康診断がそうであったように、
家計もまた、予防の時代に入るべきだと私は思います。
まとめ
なぜ「年1回」なのか。
それは、
- 変化が見える
- 続けられる
- 次の行動につなげやすい
という、人間と社会にとって最も合理的な頻度だからです。
家計の健康診断も、健康診断と同じように、
特別な人のためのものではなく、誰にとっても当たり前のものになる。
その第一歩が、「年1回」という設計なのだと考えています。


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